ベトナムの工場における産業用冷却システムは、それぞれの業種に応じた個別設計が必要であり、ASHRAE（米国暖房冷凍空調学会）やCIBSE（英国建築サービス工学会）などの国際技術基準に準拠すると同時に、国内の気候条件にも対応する必要があります。適切な技術の選択－水冷チラー、空冷チラー、NH₃、CO₂からグリコールシステム、VRF（可変冷媒流量）まで－は、生産品質を維持しながら運用コストを最適化し、企業の持続可能な発展の基盤を築きます。

1．工場における冷却システムの役割

産業用冷却システムは、生産運営の中核を担っており、とりわけ食品、医薬品、電子、機械、産業加工などの業界で不可欠な設備です。
基準に従った温度・湿度・空気環境の適切な制御は、製品品質の維持、生産工程の安定、設備の耐用年数確保を実現します。

ベトナムの高温多湿な熱帯気候においては、冷却システムの設計で以下の点に注意が必要です：

エネルギー効率（Energy Efficiency）：ASHRAE 90.1基準への準拠
運転の安全性：特にNH₃やCO₂使用時は、TCVN 6104-1およびNFPA基準の遵守
業界標準への準拠：医薬品分野ではGMP、食品分野ではHACCP・ISO 22000、電子業界ではESDやクリーンルーム規格

適切に設計された冷却システムは、初期投資コスト・運用コスト・効率性・長期耐久性のバランスを実現します。

2．ベトナムで一般的な冷却システムの種類

工場の規模や特性に応じて、以下のような冷却システムが広く使われています：

水冷チラー（Water-cooled Chiller）：高効率（COP 5.5〜6.5）、冷却塔を使用し、大規模工場に適する
空冷チラー（Air-cooled Chiller）：コンパクトで冷却塔不要、水資源が限られる地域や中小規模工場に適する

工場用チラー空調 ― DELCOが機械・電気のゼネコンとして担当したDAINESEベトナム工場プロジェクトの画像

ダイレクトエキスパンション（DX）システム：直接膨張式、冷蔵倉庫、小部屋、局所的な空調要求があるエリアに最適
アンモニア（NH₃）システム：大型冷蔵倉庫、急速冷凍設備向け；省エネ効果があるが高い安全性管理が必要
CO₂冷却システム：CO₂/NH₃カスケード方式やCO₂トランスクリティカル方式の採用により、食品・飲料業界の新たなトレンドとなっている

CO₂冷却システムの事例

VRF／VRV（可変冷媒流量システム）：工場のオフィスエリアや負荷変動のある作業エリアに使用

DELCOが設計・施工のゼネコンとして担当したToyo Solar Phu Tho省工場のオフィス内装工事におけるVRF中央空調システム

フリークーリングチラー（Free Cooling Chiller）：北部地域の冬季に外気温を活用し、コンプレッサー負荷を軽減
グリコール冷却システム（Glycol Cooling System）：中間媒体としてグリコールを使用、主にビール・飲料業界で使用

3．業種別の冷却ソリューション

食品・飲料業界では、原材料や完成品を適切に保管するために、精密な温度管理が求められます。超低温冷凍倉庫では、NH₃スクリュー式やNH₃/CO₂カスケード方式が多く用いられます。一方、ビール・飲料の製造ラインでは、安全かつ制御が容易なグリコールチラーによる間接冷却が一般的です。

医薬品業界では、すべての製造区域がGMPに準拠し、クリーンルーム規格を満たす必要があります。これらの工場では、冷水チラーとHEPAまたはULPAフィルター付きのAHU（空調機）を組み合わせたシステムが設計されます。湿度はローター式除湿機（デシカント除湿器）によって厳格に管理され、製品の品質変化を防止します。

電子・精密機器工場では、湿度と粉塵に対する管理が特に厳格です。AHUおよびHEPAフィルターシステムに加え、多くの施設で大型除湿機を導入し、湿度を40%RH未満に保つことで、静電気に敏感な部品への影響を防ぎます。

機械・製造業界では、CNC機械、射出成形機、金属鋳造設備などの機械設備の冷却が主なニーズです。水冷チラーと冷却塔の組み合わせが広く使用され、小規模工場や補助エリアでは空冷チラーが適しています。また、負荷変動のある工場では、インバーター（VSD/VFD）付きチラーやポンプの選択により、大幅な省エネが実現できます。

4．性能と運用コストの最適化

請負業者と施工方式の選定

プロジェクト最初の段階で適切な請負業者を選定することが、その後数年間のシステム全体の効果を左右します。MEP分野に精通した請負業者であれば、業種に応じた最適なソリューションの提案、設計の最適化、そして過剰投資や容量不足のリスク回避が可能です。
技術力はもちろんのこと、類似プロジェクトの実績や国際基準への対応力、さらに請負業者が契約段階で明示する施工計画・保証・保守計画も、長期にわたる安定運用のための重要な要素です。

適切な技術選択

冷却技術は、冷却負荷、生産要件、実際の運転環境に基づいて適切に選定する必要があります。大規模で連続稼働する工場には、水冷チラーやNH₃システムが最適な性能を発揮します。一方、中小規模の工場や補助エリアには、空冷チラーやVRFシステムが柔軟に対応可能です。
また、BMS（ビル管理システム）やSCADA（監視制御システム）などのスマート制御システムを導入することで、監視能力と運用効率が向上しますが、全体設計段階からの検討が不可欠です。

長期的な運用とメンテナンス

冷却システムが真に持続可能であるためには、明確な運用計画と定期保守体制が必要です。請負業者は、プロジェクトのライフサイクル全体にわたって点検・保守・モニタリングサービスの提供を約束する必要があります。これには、冷媒漏れの確認、機器の校正、制御ソフトウェアのアップデートなどが含まれます。
請負業者の長期的なサポートがあれば、システムの安定稼働が確保され、性能維持と生産中断リスクの低減が実現できます。

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