HVAC(暖房・換気・空調)システムは、室内環境における温熱環境及び換気性能の最適化において不可欠な役割を果たしています。規模や基本的な作動原理は類似しているものの、産業用と商業用のHVAC設備は、設計思想、システム構成要素、保守管理要件において顕著な相違があります。
設備規模の特徴
産業用・商業用の両HVAC設備は、小規模施設から大規模建築物まで、多様な床面積及び建物規模に適応可能な設計となっています。
産業分野では、HVAC設備は床面積500m²から10,000m²規模の製造施設及び工場建屋に導入・設置されています。施設の面積、建屋天井高、温湿度制御の要件などに応じて、最適なHVAC設備の仕様及びシステム構成を選定することが可能です。
DELCOの設計・施工によるHVAC設備は、大規模生産施設における最適な環境条件の維持管理を実現し、製造プロセス及び製品保管品質の確保に貢献しています。
一方、商業用HVAC設備は、中規模(200-500m²)のオフィスビル・商業施設から、空港や大規模商業施設(15,000-30,000m²)といった大型建築物まで幅広く対応可能です。商業用HVAC設備の規模と導入コストは、各施設の予算枠及び要求仕様に応じて最適な提案が可能です。
HVAC設備の機能性及び設計における基本方針
産業用HVAC設備は、作業従事者の健康管理に直接的な影響を及ぼすとともに、製造品質の確保、原材料及び製品の保管環境にも重要な役割を果たします。そのため、産業用HVAC設備における安定稼働性、温湿度管理などの技術的要求水準は、商業用HVAC設備と比較してより高度な基準が求められます。
したがって、産業用HVAC設備では、温湿度・気圧・空気質などの環境パラメータを高精度に制御するため、スマートファクトリーシステムや高度なHVAC制御装置と連動可能な精密機器を採用しています。
一方、商業用HVAC設備は主として室内快適性の確保に重点を置いており、温湿度制御における厳密性や安定性に関する要求水準は相対的に緩やかです。そのため、商業用HVAC設備はシンプルな設計思想を採用し、初期導入費用及び運用コストの最適化を実現しています。
DELCOが機械設備設計施工のゼネコンとして手掛けたオフィスビル向けHVAC設備
設備保全における技術的要件
定期的な保全管理はHVAC設備の安定稼働及び長期耐用性を確保する上で不可欠ですが、両設備における保全要件には顕著な違いが存在します。
DELCOが設計・施工を担当した電子部品製造施設向けHVAC設備の導入事例
産業用HVAC設備は、室内空気質の維持と製造環境の最適化を実現するため、計画的な保全管理が不可欠です。設備の不具合が発生した場合、作業従事者の健康被害のみならず、生産活動全般に重大な支障をきたす可能性があります。そのため、産業用HVAC設備は、定期点検及び部品交換を含む体系的な保全プログラムに基づく、より厳密な管理体制が要求されます。
商業用HVAC設備もシステム性能及びエネルギー効率の維持のため定期的な保全は必要ですが、その管理要件は産業用設備と比較してより簡素です。オフィスビルや商業施設のHVAC設備における保全管理は、設備機器の定期点検と不具合の早期発見・迅速な対応に主眼を置いた予防保全が中心となります。
See also: 産業用HVACシステムの機能、構造、およびシステム構成
See also: 2024年のベトナムのHVAC技術傾向