世界的なサプライチェーンシフトの潮流において、ベトナムは競争力のあるコスト、豊富な労働力資源、安定した投資環境により戦略的な投資先として注目されています。本記事では、インフラ、用地確保、FDI誘致政策において高く評価されている5つの地域を紹介し、これらがベトナムで工場建設を検討する投資家にとって魅力的な投資先である理由を解説します。

Hai Phong市（旧Hai Phong市とHai Duong省）：北部ロジスティクス・工業の中核拠点

北部最大の港湾都市であるHai Phong市は、ベトナムの主要工業・ロジスティクス・輸出拠点となるための全ての条件を兼ね備えています。Lach Huyen港は現在、ベトナム最先端の深水港の一つでありHa Noi – Hai Phong高速道路システム、Cat Bi空港と相まって、効率的なマルチモーダル輸送ネットワークを構築しています。

現在、Hai Phong市には1,000件を超える有効なFDIプロジェクトがあり、登録投資総額は346億米ドルを上回っています。2024年単年でも、49.4億米ドルを誘致し、全国第2位を記録しました。プロジェクトの77%がハイテク、電子機器、自動車部品、機械分野に集中しています。VSIP、DEEP C、Trang Due、Nam Dinh Vuなどの大規模工業団地は、LG、Heesung、Kyoceraといった世界的企業の投資先となっています。現在、韓国は同地域最大の投資国であり、111件のFDIプロジェクトを展開しています。2024年、Hai Phong市はPCI（地方競争力指数）74.84ポイントで全国第1位、同時にPGI（省レベルグリーン指数）でも全国第1位を獲得し、同地域の透明で効率的な投資環境と持続可能な発展への強いコミットメントを明確に実証しています。

Hai Phong市はPCI・PGI指数の両方で全国首位を獲得、各構成指標においても高い評価を達成

一方、Hai Phong市に統合されたHai Duong省も、北部工業マップにおける重要な拠点となっています。Ha Noi市とHai Phong市の中間に位置する戦略的立地により、Hai Duong省は首都の戦略的衛星都市として位置づけられ、主要港湾、空港、消費拠点への直接的なアクセスを有しています。2025年前半4か月間で、同省は新規FDI投資1億5,770万米ドルを誘致し、特に加工・製造業、サポーティング産業分野における安定した投資魅力を実証しています。

現在、Hai Duong省には18の工業団地が稼働しており、2050年までの計画では、同省は総面積約5,661haの計32工業団地を開発する予定です。これにより、新規プロジェクト受け入れのための豊富な用地確保が実現されます。Hai Phong市とHai Duong省の統合により、工業用地が拡張されるだけでなく、生産からロジスティクス、輸出に至る統合型サプライチェーンが構築され、同地域をベトナムにおける工場建設を検討するFDI投資家にとって理想的な投資先へと押し上げています。

Hai Duong省とHai Phong市を結ぶインフラシステムは継続的に整備が進められており、各工業団地と港湾間の物流時間を短縮し、投資家の物流活動を効率的にサポートしています。（写真：Quang Thanh橋）

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Bac Ninh省（旧Bac Ninh省およびBac Giang省）：ベトナム電子機器製造の中核拠点

Bac Ninh省とBac Giang省は、Ha Noi市から30〜50kmの近距離に位置し、Noi Bai空港や北部主要港湾への良好なアクセスを有する、工業発展に優位性を持つ2省です。両省の統合により、緊密に連携した工業エリアが形成され、大規模なハイテクFDIプロジェクトに対する投資魅力が一層向上します。

現在、Bac Ninh省には総面積8,200ha超の21工業団地が計画されており、うち15団地が設立済み、12団地が比較的完備されたインフラ設備により稼働中です。工業用地の入居率は約65%に達しており、FDI受け入れの余地が十分に残されています。2024年、Bac Ninh省は約51.2億米ドルのFDI誘致により全国首位を獲得し、2025年上半期においても、同省は約28億米ドルのFDI投資を誘致しました。この成功は、現地密着型の柔軟な投資促進政策によるものであり、特に現地投資促進活動に重点を置き、投資家が実際の事業環境を正確に把握できるよう支援しています。Bac Ninh省は現在、Samsung、Foxconn、Canon、Amkor、Goertekなどの企業が進出する、全国有数の電子機器製造拠点となっています。

Bac Ninh省Yen Phong工業団地で作業するSAMSUNG社従業員

一方、Bac Giang省は近年、FDI誘致における新興注目地域として台頭しています。同省では既に総計画面積約2,823haの12工業団地の設立が承認されており、さらなる団地計画も進行中で、2030年までに総面積7,000haの計29工業団地の実現を目標としています。現在、Bac Giang省は488件の投資プロジェクトを誘致しており、うち373件がFDIプロジェクトです。Foxconn、Luxshare ICT、Hana Micron Vina、JA Solar、Fulian Technologyなど、電子機器・ハイテク分野の大手企業が数多く進出しています。工業生産が同省の主要成長エンジンとなっています。

Bac Ninh省とBac Giang省を結ぶ交通インフラ整備プロジェクトへの投資が多数実施されています（写真：Ha Bac 2橋）

統合後、新Bac Ninh省は突出した役割と地位を有し、全国第5位の経済規模を誇り、さらなる発展の余地も非常に大きく、Gia Binh空港建設、高速道路網、大規模近代工業団地などの重要インフラプロジェクト展開を計画しています。強固な電子工業基盤を背景に、同省は世界的テクノロジー企業にとって引き続き最有力の投資先となることが期待されています。

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Quang Ninh省：統合的インフラ整備と柔軟な投資政策

Quang Ninh省は、国際空港（Van Don）、港湾（Cai Lan）、鉄道システム、高速道路を全て有し、Ha Noi市およびHai Phong市と直結する数少ない地域の一つです。さらに、同省は8つの工業団地、2つの沿岸経済区、3つの国境経済区という3種類の産業開発形態を併せ持っています。

2024年、同省は約28億米ドルのFDI投資を誘致し、全国トップ5の投資誘致地域に位置づけられました。現在、Quang Ninh省には20か国・地域から218件のFDIプロジェクトが進出し、登録投資総額は167.7億米ドルを上回っています。Bumjin Electronics Vina、Foxconn、Jinko Solarなどの大手企業が既に同地域に工場を建設しています。

Quang Ninh省Song Khoai工業団地のJinko Solar太陽光パネル製造工場

Quang Ninh省は現在、Song Khoai、Dong Mai、Texhong Hai Ha、Quang Yen沿岸経済区などの近代的工業団地の計画・開発に集中的に取り組んでいます。これらの工業団地は、統合的技術インフラ、良好な交通アクセスに加え、迅速なワンストップ投資手続きサポートを提供しています。特に、同省は環境配慮型の高度加工・製造業プロジェクトを優先的に誘致し、経済・社会発展の推進力とする方針を採っています。2024年のPCI（地方競争力指数）73.2ポイントで全国第2位を獲得し、同省の投資環境改善への実質的な取り組みが実証されています。

Ho Chi Minh市（旧Ho Chi Minh市、Binh Duong省およびBa Ria Vung Tau省）：南部工業の中核拠点

Ho Chi Minh市、Binh Duong省、Ba Ria Vung Tau省の統合により、全国最高水準の規模と競争力を有する工業・サービス・港湾複合型メガシティが形成されます。Ho Chi Minh市は南部の経済・金融・商業センターですが、現在、工業用地不足と高い運営コストという課題に直面しています。一方、Binh Duong省とBa Ria Vung Tau省は隣接地域であり、豊富な用地、統合的インフラ、明確な工業発展戦略を有しています。

Binh Duong省は長らく南部の「工業首都」と位置づけられており、2024年までの累積FDI投資額423.9億米ドルで全国第2位（Ho Chi Minh市に次ぐ）を記録しています。現在、30の工業団地と8つの工業クラスターが稼働し、入居率はほぼ100%に達していますが、VSIP、Cay Truongなどの新規グリーン工業団地の拡張が継続されています。Binh Duong省は「スマート工業・都市・サービス」への転換を目指し、環境配慮型で大規模かつ高品質なFDI投資を優先的に誘致しています。代表例として、投資額13億米ドルのLEGO工場（デンマーク）、Cheng Loong、Deneast、Dongilなどの拡張プロジェクトが挙げられます。また、Binh Duong省はFDI企業から、投資誘致政策の積極的で創意工夫に富んだ実行力において高く評価されています。行政手続き改革、包括的デジタル変革の推進などにおいても高い評価を得ています。

一方、Ba Ria Vung Tau省は南部重点経済圏の東海への玄関口という特別な地理的位置を有し、全国最大規模の石油・ガス埋蔵量をはじめとする豊富な海洋資源を有しています。同省は統合的な工業・港湾・物流エコシステムで際立っており、大規模沿岸工業発展のための理想的条件を備えた地域として位置づけられています。

Cai Mep – Thi Vai深水港群

Cai Mep – Thi Vai深水港群は、21.4万DWT超の大型船舶を受け入れ可能な地域内でも数少ない港湾の一つであり、米国および欧州との直接航路を有しています。同省には総面積7,226ha超の13工業団地が稼働しており、石油化学精製、ガス火力発電、鉄鋼、建設資材、物流などの主力産業を擁しています。Ba Ria Vung Tau省の2024年PCI（省レベル競争力指数）は71.17ポイントで全国第5位、東南部地域では3年連続首位を維持し、行政改革、投資環境透明化、企業との協働体制が高く評価されています。

このように、立地条件、国際港湾、物流インフラ、良好な投資環境、豊富な用地という包括的優位性により、Ho Chi Minh市 – Binh Duong省 – Ba Ria Vung Tau省エリアは、ベトナムにおける工場建設を検討するFDI投資家にとって戦略的投資拠点となっています。

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Dong Nai省（旧Dong Nai省およびBinh Phuoc省）：東南部工業・物流の中核拠点

Dong Nai省は南部重点経済圏に属し、Ho Chi Minh市から約30kmに位置しています。同省では、Bien Hoa – Vung Tau高速道路、Ben Luc – Long Thanh高速道路、ホーチミン市環状3号・4号線、Ho Chi Minh市 – Long Thanh – Dau Giay高速道路拡張など、地域間交通インフラの統合的整備が進められており、各工業団地とCai Mep – Thi Vai、Phuoc Anなどの国際港湾システムとの効率的な連携を実現しています。特に、建設中のLong Thanh国際空港により、Dong Nai省の南部戦略的物流ハブとしての地位が一層強化されることになります。現在、Dong Nai省は全国最多となる37工業団地（総面積13,000ha超）を有し、1,700件超のプロジェクト、総投資額360億米ドル超を誘致しています。FDIプロジェクトは主にハイテク工業および加工・製造業に集中し、Hyosung、Nestlé、Formosa、SMCなどの大手グループが進出しています。

Hyosung（韓国）はDong Nai省最大級の投資家の一つ

2024年のGRDP約493,819億VND（現行価格）により、Dong Nai省は全国第4位の経済規模を有しています。この数値は、同省の工業・建設・サービス部門の力強い成長だけでなく、安定した投資環境、大規模生産能力、成熟した産業エコシステムをも実証しています。

一方、Binh Phuoc省は西原地域の玄関口に位置し、東南部 – 西原地域 – カンボジアを結ぶ地域間連携における戦略的位置を占めています。国道13号・14号線、DT741号線、南北高速道路、建設予定のGia Nghia – Chon Thanh高速道路、Ho Chi Minh市 – Thu Dau Mot – Chon Thanh高速道路など、交通インフラへの大規模投資が進められています。

Binh Phuoc省の交通システムは日々統合的整備が進められ、周辺省および地域との効率的連携を拡大しています。

同省には総面積約4,700haの13工業団地が計画されており、入居率は69%に達しています。中でも、Becamex Binh Phuoc、Minh Hung – Sikicoなどは大規模な面積、統合的に整備された近代的インフラ、良好な交通アクセスを備えています。2030年計画では、同省の工業用地総面積は18,105haに拡大される予定です。現在、Binh Phuoc省の工業用地リース料は比較的安価で、80〜100米ドル/m²程度と、隣接するBinh Duong省、Dong Nai省の130〜150米ドル/m²と比べて競争優位性があります。これまでにBinh Phuoc省は432件のFDIプロジェクト、総投資額45億米ドルを誘致しています。

2025年7月1日より、Dong Nai省とBinh Phuoc省が正式に統合されます。完備された技術インフラ、強力な生産能力を持つDong Nai省と、広大な用地ポテンシャル、競争力あるコストを持つBinh Phuoc省との組み合わせにより、長期的FDI投資家にとって高い魅力を持つ新たな工業成長拠点が形成されることになります。

情報源：Quang Ninh新聞、財政時報、VnEconomy

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